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ホイールベアリングのグリスアップ

By | 2025年11月10日

ベアリングの寿命を左右するグリスの役割と種類

車体やオートバイのホイールベアリングは、回転する車輪の荷重を支え、スムーズな回転を維持する非常に重要な部品です。

このベアリングの性能と寿命を最大限に引き出す鍵となるのが、内部に封入されているグリス(潤滑剤)です。

グリスは、ベアリングの内部にある金属製のボールやローラーと、それらを囲むレース(軌道面)との間に油膜を作り、金属同士の直接的な接触を防ぐ役割を担っています。
これにより、摩擦抵抗を劇的に減少させ、発熱や摩耗を防ぎます。

グリスが劣化したり、水分や異物が混入したりすると、油膜が破れて摩擦が増大し、異音の発生やガタつき、最終的にはベアリングの焼き付きや破損を引き起こします。

ホイールベアリングに使用されるグリスにはいくつかの種類があり、用途に応じて適切なものを選ぶ必要があります。

一般的なものとしては、リチウム石けん基グリスやウレアグリスがあります。
リチウム石けん基グリスは汎用性が高く、耐水性や耐熱性もバランスが取れていますが、特に高温になりやすい部位や高負荷がかかるベアリングには、より高性能なグリスを選ぶことが重要です。

具体的には、耐熱性、せん断安定性、酸化安定性に優れるウレアグリスや、一部の高級車や高性能なオートバイでは二硫化モリブデングリスなどが推奨されることもあります。

グリスを選ぶ際は、「ちょう度」というグリスの硬さを示す指標も重要です。
ベアリングのクリアランス(隙間)や使用温度範囲に適合したちょう度のグリスを選ぶことで、適切な潤滑性能を維持できます。

適切なグリスアップでベアリングを長持ちさせる分解・注入手順

ホイールベアリングのグリスアップは、専門的な作業となりますが、適切な手順を踏めばご自身で寿命を大きく延ばすことが可能です。

まず、作業を始める前に、ハブやホイールからベアリングを慎重に取り外します。
ベアリングの抜き取りには、専用のベアリングプーラーを使用するのが最も安全です。

無理に叩き出そうとすると、ベアリングやハブ側の損傷につながるため注意しましょう。

ベアリングが取り外せたら、古いグリスを徹底的に除去する洗浄作業が最も重要です。

パーツクリーナーや灯油などの洗浄剤を使って、内部のボールやレースの隙間に残った古いグリス、スラッジ、異物などを完全に洗い流します。

このとき、ブラシなどを使って丁寧に汚れをかき出し、洗浄剤が完全に蒸発するまで乾燥させます。
水分や洗浄剤が残った状態で新しいグリスを詰めてしまうと、潤滑不良の原因となるため、乾燥は焦らず丁寧に行ってください。

次に、いよいよ新しいグリスを充填します。

グリスガンやグリスチェンジャーなどの専用工具を使うと効率的ですが、手作業で行う場合は、手のひらにグリスを適量取り、ベアリングの側面から押し込むようにして、内部の隅々までグリスを行き渡らせます。

特に、ボールとリテーナー(保持器)の間の隙間にしっかりとグリスが詰まっているかを確認してください。

充填するグリスの量は、ベアリング内部の容積の約3分の1から半分程度が目安とされています。

グリスを詰めすぎると、回転時の抵抗が増えたり、発熱してグリスが漏れ出したりする原因となるため、過剰な充填は避けてください。

最後に、シールを元通りに取り付け、ハブにベアリングを圧入すれば作業完了です。

定期的な点検と適切なグリスアップは、安全な走行を支える基盤となります。